2月9日発ブルベBRM209房総クラシックは、とても辛いブルベになってしまった。
正直ナイトブルベを舐めていました。
想定外の連続 。

22時、深夜の袖ヶ浦臨海公園から極寒の暗闇の中へとスタート。
暗闇の中を100名のランドヌール達の蛍光ベストとライトの光が揺れる。

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自分のペースで走りたかったのだが、自然と集団の中に組み込まれ疾走する。
平均時速28km〜30kmぐらいか。

早過ぎる!!

と思ったのだが、脚は全然使っていないし、適度に心拍があがって寒くないし、この集団でゴールまで行ったら、昼過ぎには着いちゃうな、ホテルキャンセルして明日帰ってもいいかな・・・
今考えれば、恥ずかしくって気が狂ってしまうほどのお花畑思考。

体は熱気を持って丁度良い暖かさなのだが、頬が冷気で痛く、目から涙が出てくる。

信号待ちの時、余裕こいて前の方に「しかし寒いっすねぇ?」などと話しかける。
「そうですね、心拍がまったく上がらないから寒くてしょうがないですよ」

えっ?
自分、結構ハァハァきているんだけど・・・
もしやこの速さで走って心拍が上がらない人たちと一緒にいるのか?
この時気づいて集団離脱していれば結果は違ったかもしれないのだか。

馬鹿は調子にのったまま、平坦基調の道を疾走を続けた。
どうして俺は同じ間違いを何度も繰り返すのだろうか?
分かっていたはずなのに。 

最初のトラブルはサイコンの表示が段々薄くなり、ついには見えなくなってしまう。
寒さのためか?

予報では最低0度のはずが、もうマイナス2度じゃないか。
これからどんどん寒くなるというのにいったいどうなっちまうんだ?
寒さに慣れた東北在住の俺なら千葉県のナイトブルベなんて楽勝のはずが話が違うぜ。

とにかく距離とスピードと現在時刻が分からなくなった。

しかし、GPSはしっかり動いている。さすが米軍御用達のガーミン様。
ルートさえ分かればいいかなどと気楽に考えて進む。

38km地点のPC1には多分23時30分頃到着。

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気づかなかったのだが、結構汗をかいていてコンビニの外でホットコーヒーを飲んでいる最中にも震えが起きる始末。
いくらなんでも速すぎたと反省し、ここからはばらけてきたこともあり、単独行を選択。

そしてスタートしてまもなく40km地点くらいか、突然右太ももがつる。

   早くも右脚終了! あと270km!どうする?俺!

そうとう動揺したが、時速15kmぐらいならなんとかペダルを漕ぐことが出来るようなので回復を期待してさっきまでとうって変わったよろよろ走行で進む。

いったい何人に抜かされただろうか。
ピクピクといやな衝撃を繰り返す右太ももは良くなるどころか、こんどは右を庇って無理をした左太ももまでピクピクが始まる。

なぜ前ももがつる?
上りもなかったし、軽いギアでケイデンス重視でクルクル回してたんだから太ももになんか負担はかけてなかったはずだ。なぜこんな序盤に太ももがつるんだ?
どうするんだよ、これから270kmもあるんだ。
こんな脚で行けるわけがない!

これだけではなかった。
ブルベの恐ろしさは次々とその本性を現す。

なんとスピードを落としたことにより、体が冷えたのであろう、寒さが極度の震えとなって襲いかかり危なくて走行不能となってしまった。
背骨の奥からなんとも不快な震えが体中に広がり、全身発作が起きたようにガクガク揺れる。


        完全な緊急事態発生


ほとんど街灯のない、千葉県のどこかの道端にバイクを停め、アウターのレインジャケットの中に薄手のウインドブレーカーを着こみ、予備にと持ってきたホッカイロ2個を背中と首元に貼り付ける。
そして、緊急時の補給用に持参したブドウ糖を全部口の中に放り込む。
この人気の無いところにいたのでは、ほぼ遭難状態なので、なんとかコンビニがある所まで進むことを決心し、瘧が起きたような体を誤魔化しながら、バイクに跨った。

幸い15分ほどでコンビニの光が前方から見えたときは、心底嬉しかった。

コンビニで何分くらい休んだろうか?
豚汁とおにぎりを胃袋に入れ、なんとか震えがおさまった。

コンビニの壁時計は1時20分。
もちろん頭の中はDNFでいっぱい。
もう恥も外聞もありません。命が大事。

しかし、DNFするにもこの時間では電車も動かず、深夜営業の飲食施設も見当たらない。
とにかく何時までもコンビニの中にいられるわけでもないので、とにかくしかたなしになにも考えもなしに夢遊病者のように出発する。

なんとなく調子にのって今年のブルベの計画を立て、夏には600km走れる自分をつくれるような気分になっていた、その甘さに腹が立つ。

思い出した。
冷酷で容赦がなく圧倒的な暴力でひ弱な自分を痛めつけるブルベというゲームの本質を。

もう二度とブルベはやらない。
自転車を始めて幸せだったツーリング時代に戻るんだ。
いい年してこんな真っ暗闇のどこだか分からない所を自転車で震えながら走るなんてバカげている。
帰ったら簡潔にブログで報告して、ブログ閉鎖だ。
無理だよ。俺には所詮無理だったんだ。
なにが600kmだ、1000kmだよ、馬鹿馬鹿しい。
ああ脚は痛いし、寒いし、辛くて辛くて、もういいよ、たくさんだよ。
とにかく温かいところでゆっくり休みたい。
ラブホテルか24時間の日帰り温泉でもないかな。

そんなもんは都合よくあるはずもなく、思いつく限りのネガティブな言葉を実際に口にしながら進む房総真冬深夜の自転車一人旅。

                                 つづく・・・