PC3から鴨川へのダウンヒルでは、なるべく脚を止めないで高ケイデンスを保ち、脚つりからの復活に務めた。
その甲斐あって、海岸沿いの平坦地で時速25km以上を維持することが出来るようになった。

それにしてもやっとぽかぽかと暖かくなってきて、陽光輝く太平洋が目に眩しく、漁港では買い物をする人々、楽しそうに笑いながらコーヒーショップに入るカップル等、三連休の中日らしく人々の賑わいも眼に入るようになってきた。
そんな温かい風景に包まれていた、その時に・・・

あれ?

突然、自分の目から涙が落ちてきた。
もちろん悲しいわけではなく、理由もなく大量の水分が目から流れだすといった感じである。
顔中、涙と鼻水とでビシャビシャにしながら、抑えきれない感情も溢れ出し、ついにワーワー声をあげて泣き出してしまった。

珍しく自分の後ろにはカップルの参加者が追走されていたので、危ない人だと思われたくないので、景色を撮る振りをして止まり、実際に海に向けてカメラを向けた。

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 たぶん緊張から解き放られた開放感からくる喜びの涙だったのではないか。
なにしろ先程までの極寒の暗闇で恐怖に怯え、もがいていたのだから。

緊張といえばこのナイトブルベ300kmの出場を決めてからずっと緊張していたような気がする。いやだ、やりたくない、止めようかな、辛いだろうな、なんてことばかり考えていた。
その気持からの開放だったのだと思う。

その後向かい風が強くなり、思ったようにスピードアップは出来なかったが、無事白浜のPC4に到着した。
時刻は11時半ぐらいか。
貯金はあまり増えなかったがなんとか1時間を確保した状態で最後のPC5へ向かうことが出来た。

少し、完走の可能性が見えてきたようだ。

PC5までは内陸の山岳コースだが、脚がなんとか復活してきたので、ブルベイーブンペース、つまり時速15kmでの走行は確保出来るのではないかと読んだ。

そこで、ここでも休憩はそこそこにして、出発したのだが・・・

上り坂を慎重に脚の状態を見ながら登り始めたのだが、今朝出発の200kmの出場者の方々が対向車線を下りてくる。

やぁ! こんにちは! 頑張りましょう、などと声を掛け合うのだ。

なにやらとっても晴れやかで嬉しそうだ。
それに比べて我が300kmの後ろ組は、俯き加減で汚れてくたびれていて、いかにも使用前使用後の風情だ。

自分も根が見えっ張りなので、こんにちは、平気平気、全然なんとも無いよ、ああブルベって楽しいっすね、なんて雰囲気で今までにない根性で登っていったのだが、それもちょっと辛くなり、フロントをインナーに変えようとした時その時

あっ!

クルクル回していたペダルが突然ガツンという音とともに完全停止してしまった。
それと同時に体も前に投げ出されそうになったのだが、とっさに左のクリートを外し左足を地面につきそのまま受身を取るような形で地面にころがった。

ああ、空ってしっかり青いんだなぁ。

気を落ち着けながら自分の体の状態を探るが、どこも痛くない。
次はバイクだが、ディレーラーがクランクの方に引っ張られて真横になっている。
チェーンが落ちてクランクのところでとぐろを巻いたようになって固定されていた。

そうとう硬かったが携帯工具を使いながらなんとか元の状態に戻すことが出来た。

ああ、良かった。またこの苦行を続けられる、というのは冗談だが今までの極限状況からの生還を果たしてきた身としてはこんなメカトラブルごときでDNFしてたまるかというのが本音だった。

後は、もちろん上りはきつく、間違いやすいと言われていた地点でしっかりミスコースをして1kmほど登り返さなければならなかったなんて、ブルベではよくある、ささやかなことがあったものの、予定通り1時間の貯金を確保したまま最終のPC5に着いた。

時刻は15時。
ラスボスのマザー牧場頂上まで7km程。
これを1時間で行けば、後は下りと平地30kmを2時間で行けばクローズに間に合う。

よっしゃあー

頭の中になぜか鉄腕アトムの主題歌が駆け巡り、体中に力が漲るのがわかった。
奮発して700円の滋養強壮剤を飲んで、最後の戦いへと一躍勇んで向かったのだ。

後は幸いにも何事も起きなかった。
脚が復活したお陰で、夕方の渋滞や木更津市内の信号待ちに苦しめられながらも時速28kmから30kmでの走行が可能になり、ゴールに飛び込んだのが17時45分。

クローズドから15分を残してのゴールとなった。

ゴールしたらどんな気持ちになるのかはずうっと走りながら考えてきたことだが、いざ実際に無事ゴールしても特別な感情は起きなかった。

途中であんなに泣いたくせに ^^;

それよりも一刻も早くこの場を逃げ出し、風呂に入り焼肉を食べることだけが望みとなっていた。

こうして冬の極寒ナイトブルベは終了した。
結局後から考えるとトラブルの数々は自分の未熟さが招いたことであり、無事完走出来たことは実力より、天候等幸運が重なったことによると思われる。

いやあ、完走できて良かった。本当に良かった。

今までのブルベで一番印象に残るブルベとなりました。
千葉のスタッフの皆さん、ほんとうにありがとうございました。

PS ゴールでいただいた野菜スープ、また泣いてしまいそうになったくらい美味しかったです。