AJ北海道主催のBRM803大雪に行って来た。

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去年の暮にこの大雪600kmにエントリーしてから、真冬の千葉300kmを皮切りにこの日のために努力してきた。
鼻血や蕁麻疹にも悩まされてきた。
4月の大雪に恐れおののきDNFを余儀なくされた。
大雨に気持ちが折れたった100kmでDNFしたこともあった。
一時は完全に諦めかけた時もあった。
だから母の故郷のこの大地に立てただけでも感無量である。

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あとは今の自分の実力でどこまで出来るのか。
簡単な戦いでないことは承知しているつもりだ。 


前夜祭が滝川にある松尾ジンギスカン本店という所で行われたのだが、道に迷い集合時間から5分ほど遅れて着いた。

もうみなさん、席につかれている。どこに座ろうか廻りを見渡すがどこも空いてない。 


その時一人の女性が満面の笑みで手を振って招いてくれた。

先月会津のブルベで一緒だった名門亀太郎軍団の姫「花ちゃん」だった。
 


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ここから僕と花ちゃんの3日間にわたる長い物語が始まる。


会津では一緒に走る場面はなかったのだが後夜祭で花ちゃんもこの大雪600にエントリーしていることを知り、盛り上がった記憶がある。

彼女は今年からブルベを始めて300kmまでは走ったことがあるが、600kmを走るのは初めてで、それでも北海道の雄大な景色と南富良野でエゾカツカレーを食べるのが楽しみであることを知った。


正直今日のために2年がかりで準備して400を2回DNF、3回めの富士大廻りでやっと完走してここに来ている自分からするとちょっと贅沢な希望のような気がした。


「エゾカツカレー、僕も食べたいけど完走のため今回は全部コンビニ飯にする。然別湖・糠平湖への登りを考えるとPC3の上士幌には制限時間ギリギリになる可能性があるからね」


などと素人のくせに偉そうに脅かしてみると可哀想に花ちゃん、「そうか~、やめたほうがいいかな~」などと悲しそうな顔をしている。
 

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あけて次の日、スタート地点の「道の駅たきかわ」にぞろぞろと全国から勇者たちが集まってきた。

皆とても速そうに見える。自分が場違いな所へきてしまった感が強まる。

花ちゃんもいたが亀太郎の男の人が一緒なので挨拶だけにとどめる。
 

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簡単なブリーフィングの後、8時にスタートとなったが、さすが600kmともなると皆ゆっくりと談笑しながら三々五々出発していく。


北海道のY田さんグループも出発した。

Y田さん・チコリンさん・chikaさん・bongoさん・石巻のSさん・北海道のHさんというメンバー。


実はY田さんがブログで北海道を楽しんでもらうため39時間完走を目標に走るとおっしゃっていたし、実際に去年200kmしか走ったことのない福島のkeiさんを見事完走させた名人芸の方だと伺っていたので、機会があればいっしょに走らせてもらおうと思っていたところなのだが。


ほとんど平坦だと聞いてきたのにスタートしたと思ったら結構な登り、やっと平坦になったと思ったら、いやらしいアップダウンが始まる。
 

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前を行くのはチコリンさん。
嘘だろ!これが所謂北海道の平坦な道!?

こんなのが600kmも続くうえに狩勝峠・白樺峠・幌鹿峠・北見峠?


貧脚さんはゆっくり行くしかない。

それに比べY田さん軍団の速いこと!


ぜ~んぜん追いつけない。一緒に走らせてもらおうなんてレベルではなかった。


39時間で走ると宣言している人達がこのスピードなら、もう結果が出たも同然じゃないか。後はどこまで行けるのか?どこの駅で輪行すればいいかなんていうことを考えながらそれでも行けるところまで頑張ろうと当社比でいつもより速いペースで走った。


57.8km地点の富良野PC1には10:28着。
 

ここで花ちゃんと会う。

どうも一人で走ってるみたいだが、一緒に来た亀太郎の男の人はと聞くと、最初から一緒に走る約束をしてた訳でなく、それにとても速い人なのでスタートからバビューーンといなくなってしまいましたとのこと。


それって女の子一人で来てるのと同じじゃん!!!


ということは、見るところお若く多分独身の花ちゃんは600km二晩を、たった一人で走るつもりなの????


エゾカツカレーどころか本物の蝦夷鹿とかヒグマとかでるかもしれない深夜の陸別への道を?

一人でぇぇぇぇぇぇぇ?


と強く思ったが、思っても助けてあげれるわけでもないので。お互い頑張ろう的なあいさつで誤魔化しながら、さっさとPC1を出た。


なんといってもこれからPC2までは狩勝峠という最初のボスとの戦いが待っているのだ。

北海道らしい雄大な景色の中40kmほど走り南富良野の道の駅を通過した。

昨日花ちゃんに言った通り、ここは通過して次のコンビニで昼食にする予定だ。

道の駅のレストランの横の壁にはたぶんY田軍団の方々のバイクが立てかけてあった。


出来れば花ちゃんも予定どうりここでエゾカツカレーを食べてY田さん軍団に混ぜてもらいといいのになぁ、などと勝手なことを思っていた。


というのも、どうも気になってしょうがない。

若い女の子がこんな過酷なゲームに徹夜を含む二日間も挑むなんて。

しかも、今年からブルベを始めた?

だれも止めなかったのか?


花ちゃんのことばかり気にしながら、でももう会うこともないかもしれないと思いながら道の駅から少し行ったセイコーマートで昼飯休憩に入った。


とにかく貧脚は休憩時間も最小にしなければならない。

しかもまだ序盤だ。

食べやすいおにぎり系を口いっぱいにほうばり・・・・


その口いっぱいのおにぎりを思わず吹き出しそうになってしまった。


花ちゃんが軽やかな脚取りでこのコンビニにやってきたのだ。


な、なんで?

エゾカツカレーは食べなかったの?


聞くとやはり時間的に難しいと考えやめてコンビニ飯にしたとのこと。


でも、なぜこのコンビニに?

偶然?

まるで花ちゃんと自分が縁があるみたいじゃないか?

神様は心配ならお前が一緒に走ってやればいいとおっしゃっているのか?

でもね、神様。自分に実力があればそれもありだけど、自分でさえ精一杯なのに一緒に走っても弱者同士のコンビなんてお互い脚を引っ張って共倒れになるだけじゃないか。


などと頭の中でぐちゃぐちゃ自問自答しているが花ちゃんはそんなことも知らず平和な顔をしてコンビニ弁当を食している。


でも全然進んでない!


食べるの遅い!

おまけにメールなんかしてる!

やっぱり無理!

これは一緒に走ったら共倒れになる!

と判断して心を鬼にして先に行くことにした。


じゃ先に行くからね。僕遅いから狩勝峠でバビューンと抜いてね


花ちゃんは無邪気な顔をして笑顔いっぱいで手を振っている。


その無邪気な笑顔に弱い。

なんだか、めちゃくちゃ心が痛むんですけど!


なんで僕がこんな気持にならなくちゃならないんだ?

まるで、まるで、昔読んだ遠藤周作の小説みたいじゃないか。

【わたしが・棄てた・女】


この時は今考えるとなんて恥ずかしい勝手なことを思っていたのか。


狩勝峠はそれほど手強いわけではなかった。しかし日差しが強く暑さで熱中症の危険が考えられた。

だから少しペースを抑え氷水を体にかけながら進む。


今回600kmを走るにあたって自分に課したノルマがある。


50kmに一回は必ずコンビニに寄って1ボトルは氷水、2本目は氷だけで常に満杯にする。

水は必ず2Lを買い、体を冷やすためにも使う。


食べたいものに加えて、おにぎり1個とエネルギーバー1個を買い、おにぎりは口にエネルギーバーはフロントバッグにいれ25km走ったら食べる。


このルールのおかげで熱中症にならずまたハンガーノックにもかからず、また後述するが眠気との戦いにも勝つことが出来たと思っている。


もうすぐ狩勝峠の頂上というところで歌うような関西弁が聞こえてきた。


「おさきに~」


Y田さん軍団のchikaさんだ。

クライマーだと聞いていたが、細身の体を揺らしながら軽やかに追い抜いていった。

なにか美しい黒いアゲハ蝶を見た気がした。


ということはY田軍団に追いつかれた!?

逃げなくては!

Y田さん達は39時間完走隊である。ならばそれより速く走らねば完走はありえない。


幸い(何が幸いかわからないが)chikaさんは頂上のレストハウスの方へと行ったのでここで休憩するみたいだ。
 

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こちらは休憩なしでさっさと先へと行かせてもらう。


豪快に26kmほど下った先が144.1kmの十勝清水PC2だ。

15:39着 自分の予定より1時間ほど速いペースだ。

クローズまでの貯金は2時間。


ここからこのブルベのメインイベント、然別湖から幌鹿峠越え糠平湖までの64kmの区間が始まる。

計画ではここで脚を使い切らないこと。適度に休憩を入れて21時までに着く予定を立てている。


1%ほどの斜度の道が延々と続く。一見平坦に見えるので速度が上がらないことに焦りを感じるが我慢・我慢。

ゆっくりで良いのだ。

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この時、這いつくばるようなライディングフォームの年配の方から抜かれた。

「後ろ姿に元気がない!!」と大きな声で怒鳴られた。


いや別に元気はあるんですけど、ただコントロールしているだけで。

と思ったがまあいいや、善意の気合だと思って苦笑いしながら進むと、2kmぐらい行ったところで先程の気合オジサンが道端に座ってうなだれている。

大丈夫ですかと聞くと

「疲れちゃった」

とのこと。まあ、病気でもなさそうなので、先を急ぐ。


然別湖までの登りに入り、6%ほどの傾斜が延々と続く。

この6%ほどの傾斜が延々と続くのが北海道の峠の特徴で、足休めがない。

続くといったら本当に続くのだ。

容赦がないのである。

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これがいい加減売り切れ気味の脚に効く。

白樺峠の前の扇原展望台で小休止を余儀なくされる。

大丈夫、まだ予定通りだ。
 

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夕暮れを迎えた広大なパノラマを愛でていたら、下の方からなにやらピンクの物体がゆらゆらと近づいてくる。


心臓がひっくり返りそうになった。

花ちゃん、その人である。


あっ、お疲れさま~とあの無邪気な笑顔で・・・


ここまで一人で登ってきたのかと驚きと少なからずの感動を覚えた。


するとY田軍団の皆様も次々と登ってくる。

聞くと前のPCから一緒に走ってるとのこと。


それは本当に良かった。

このペースで平気な顔をして登ってくる花ちゃんは、さすが600km走りに北海道までくるだけのことはある。それなりの実力の持ち主であると見直した。

そのうえY田軍団と一緒に走れるのなら、完走も間違いないし、心配した夜の危険もないだろう。正直ほっとした。


良かったのだが、今度は自分が危ない。

自分はスタートでY田軍団にちぎられているのだ。


Y田軍団がメイン集団で自分は逃げをうっている新城幸也の心境になっていたのだ。


やばい、花ちゃんとまた会えたのに話しもせずまた逃げるように先を急いだ。


花ちゃん、君から逃げたんじゃないんだ。タイムアウトDNFから逃げたんだぜ。